不妊検査
不妊検査
女性側の検査はほとんどの方が受ける一般的な検査と、一般的な検査では不明確な部分や疾患が疑われる場合等に受ける特殊な検査があります。
基礎体温とは心身ともに安静な状態で測定した体温のことです。大切なのは体温自体ではなく、正常な月経周期の卵胞期には低い体温を、黄体期には高い体温を示す2相性のパターンが認められることです。基礎体温測定からは以下のようなことが確認できます。
婦人科診察室の診察台の上でおこないます。子宮全体の肥大、変形、腫瘤の有無と子宮内腔の形状、子宮内膜の状態などの他に、子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜症・子宮内膜ポリープ、卵巣嚢腫などの異常がないかを確認します。また、経腟超音波検査による子宮・卵巣の観察は不妊治療においては必須です。中でも排卵のモニタリングは排卵の予測方法として汎用されています。
血液を採取して各ホルモン検査を行います。ホルモン検査には、下垂体から放出されるホルモン(卵巣を刺激する卵胞刺激ホルモン[LH]・黄体形成ホルモン[FSH])、女性ホルモン・男性ホルモン、黄体ホルモン(プロゲステロン)、母乳を分泌するプロラクチンや甲状腺ホルモンの検査が含まれます。ホルモンは月経周期によっても変化しますので、月経期・黄体期などに分けて検査します。また、最近では抗ミュラー管ホルモン(AMH)の測定が普及しています。これの値は卵胞数を反映しており、卵巣機能の予備的な確認に有用とされています。
血液を採取してクラミジア抗体検査(IgG、IgA)の有無を確認します。クラミジア抗体検査(IgG、IgA)は卵巣の病変の有無を予測するのに有用な検査です。クラミジアIgG抗体検査が陽性の場合、卵管病変が確認される可能性は60%程度ですが、逆に陰性であった場合に卵管病変が認められない可能性は80~90%と高いのが特徴です(den Harton JEら Hum Record Update 2006:12:719-730)。
クラミジア抗原(核酸同定)検査はクラミジア感染の有無の確認に行います。
卵管疎通性検査には卵管通気法、子宮卵管造影法、超音波下卵管通水法の3種類があります(必ずしも全ての検査が行われるわけではありません)。
不妊症の原因のうち頸管因子は数%存在すると考えられています。子宮頸管より分泌される頸管粘液は、子宮内腔、卵管へと進む精子の通路になるだけでなく、精子の取り込み、貯蔵、選択、活性といった生殖生理において重要な役割を担っています。
頸管因子が原因の不妊症では頸管粘液の分泌に異常がある場合と、頸管粘液と精子の適合性に問題がある場合があります。従って、それぞれ頸管粘液検査や精子頸管粘液適合検査(フーナーテスト:性交後試験)を行います。フーナーテストとは性交後に膣内、頸管粘液内の運動精子の存在を調べる検査です。フーナーテストに異常が出た場合、抗精子抗体などの免疫因子の存在のほか、乏精子症や精子無力症といった男性因子が存在する可能性があります。
抗精子抗体の検査は早めに行った方が良いでしょう。一般的に血液中の抗体の存在と抗体の強さを測定します。
上記の一般的な検査に加え、さらに卵管因子(卵や精子を運んでくれるか)と子宮因子(受精卵を着床できるか)について調べる必要がある場合には、以下の検査を行うことがあります。これらの検査が追加として加えられるか、または最初から行う予定であるかは受診される医療機関により異なる場合がありますので、きちんと説明を受けて確認しておく必要があります。
腹腔鏡検査は上記で説明した卵管疎通性検査の1つである子宮卵管造影法で異常を認めた方において、さらに詳細を知るために行うことがあります。
子宮卵管造影法での卵管の疎通性が十分でない方や造影剤の拡散が十分でなく卵管周辺に癒着が疑われる方には、直接確認できる腹腔鏡検査を行うことは意義のあることです。また、これにより子宮・卵巣をはじめとする骨盤内臓器の状態が確認でき、子宮内膜症や卵管周囲の癒着などのいままで分からなかった不妊原因がわかることがあります。つまり、腹腔鏡検査により子宮卵管造影法では十分に観察することができない部分を補うことができます。
子宮鏡検査は、経腟超音波検査や子宮卵管造影法では見つけることのできない子宮内膜ポリープ、慢性子宮内膜炎などを見つけることができます。また、癒着子宮内腔の病変、子宮粘膜下筋腫などの有無や子宮内に奇形・異物がないかを観察するために行われます。
磁場を用いてCT検査のように体の断面像を撮ることのできる検査です。子宮内膜症病変の診断および進行の度合いの推定に非常に有用です。
男性不妊症に対する診療では、性行為回数を含めた性活動に関する詳細な情報という極めてデリケートな内容を伺う必要もあり、プライバシーを十分確保した形で慎重に行います。専用の精液採取室を準備するなど、プライバシーに配慮した診療が行われています。しかし、医療機関のすべての泌尿器科が男性不妊の診療を行っているわけではありません。むしろ男性不妊を専門に扱っている施設は少なく、ほとんどが婦人科(特にART「生殖補助医療技術」の出来る施設)で診療されています。その場合、泌尿器科専門医による外来の有無などを確認された方が良いと思います。
男性側の検査は、不妊症の診断のためにおこなわれる精液検査と一般的な泌尿器科的な検査に分けられます。泌尿器科的な検査については、精液検査のみを希望する方もいらっしゃるため患者さんの希望に合わせた検査の実施を原則としています。
精液量、総精子数、精子濃度、総運動率、前進運動率、生存精子率、正常形態率などを検討します。精液は、2-7日の禁欲期間(射精しない期間)の後に採取し、禁欲期間は記載するようにします。自宅で採取した場合、温度変化に気を付け20℃から30℃以下に保持し2時間以内に検査すれば、ほぼ病院で採取した場合と同様の結果が得られることが多いと言われています。1か月以内に少なくとも検査を2回行います。2回の結果に大きな違いがあれば、さらに検査を行います。以下に基準値を示します(表3)。
問診により不妊症に関連する病気の既往の有無、勃起や射精などの現在の性生活の状況を確認します。次に外陰部(陰茎、陰嚢、鼠径部、内性器)の診察を行い、男性不妊症の原因として最も頻度の高い精索静脈瘤(精巣上部や周辺の静脈が拡張した状態)の有無などを視診、触診で行います。
血液中の男性ホルモン(テストステロン)や性腺刺激ホルモン(LH、FSH)、プロラクチンなどを調べます。